◆はじめに
数ある法律事務所の中から、幣事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本記事では、企業買収の手続きのうち、デューデリジェンスについて、解説してきたいと思います。なお、企業買収の基本的知識や進め方についてはこちらの記事を、企業買収のスキームについてはこちらの記事をご参照ください。
◆デューデリジェンスとは
➀デューデリジェンスの意義
デューデリジェンス(DD)とは、対象企業の価値を適正に評価するための手続きのことを指します。
一般的には、基本合意書の締結後に行われます。
デューデリジェンスが完了すると最終契約の締結に進むことになります。
最終契約締結後は、基本的には企業買収を中止することはできません。
その意味で、デューデリジェンスは、企業買収を行うべきかを判断する最後の機会となります。
➁初期分析やバリュエーションとの違い
基本合意書締結前の段階においても、対象企業(あるいは仲介業者)から開示された情報を基に初期分析やバリュエーションを行うことが一般的です。
ここでの主眼は、対象企業と買収の交渉を進めていく価値があるかを検討することです。
対象企業を買収する価値があるのか、どのようなスキームがよいのか、買収価格はいくらまで出せるのかといった大枠を判断することになります。
また、基本合意書締結前の段階では、与えられる情報も限られています。
この段階でも必要な情報の開示を求めることはとても重要ですが、企業買収を行うかどうか不明確な状態ですので、対象企業も情報の開示に消極的になる可能性があります。
これに対して、デューデリジェンスの目的は、企業買収を行うべきかの最終判断を行うことです。
そのため、初期分析やバリュエーションと比べて、より踏み込んだ審査が求められます。
判断材料が不足していると感じた場合には、対象企業に対して積極的に情報の開示を求めていくことが必要となります。
そのため、基本合意書の中で、対象企業に対して、デューデリジェンスへの協力義務を課すことが一般的です。
◆デューデリジェンスを行う際の視点
デューデリジェンスを行う際には、2つの視点を持つことが必要です。
➀企業買収後の事業計画の実現可能性の検討
デューデリジェンスでは、基本合意書締結前に描いた事業計画の実現可能性を検討する必要があります。
基本合意書締結前の段階(=初期検討の段階)においては、相手方の基礎的な情報をもとに、対象企業のビジネスモデル、事業性及び企業買収後の相乗効果の有無等を検討し、事業計画の大枠を立てることになります。
デューデリジェンスにおいては、そのいわば「青写真」ともいえる事業計画の実現可能性を検討することになります。
対象企業を買収することにより、どのような利点や相乗効果が期待できるか詳細に検討する必要があります。
また、組織図や従業員の情報を取得し、企業買収後に組織の統合を進められるかを確認することも重要です。
➁対象企業の抱える問題、リスクの確認
企業買収により、対象企業の技術、商流などのプラスの面だけでなく、対象企業が抱える負債や、継続中の訴訟係争などのマイナスの面も一緒に引き継がなければならない可能性があります。
そのため、デューデリジェンスにおいて、対象企業の抱える問題、リスクを調査し、そのマイナス面を前提にしても企業買収を行うか判断する必要があります。
なお、対象企業の経営者としては、できるだけ買収価格をできるだけ高値にしたいと考えるのが一般的であり、対象企業の抱える問題、リスクの開示については消極的になる可能性があります。
開示された情報がすべてであると信じるのではなく、情報の漏れがないかしっかりとし、怪しい箇所を発見した場合には情報の開示を求めることが重要となります。
◆デューデリジェンスの種類
デューデリジェンスはいくつかの種類に分けることができます。
➀法務デューデリジェンス
対象企業がかかえる法的なリスクを調査することを目的とします。
主な調査事項:
- 重要な契約上のリスク
- 訴訟係争の有無
- 知的財産権
- 環境汚染
- 法令遵守等
法務デューデリジェンスで法的なリスクが発見された場合、そのリスクを前提に企業買収を行うかを検討することになります。
法的リスクにも様々なものがあります。
そのリスクが金銭的な価値に置き換えられる場合は、買収価格の値下げをすることで対応するという方法もあります。
また、将来的にリスクが実現した場合には、現経営陣(=企業買収の売手)がその損害を負担するという条件で合意する方法もあります。
一方で、法令違反の可能性がある場合など、重大なリスクが発見された場合には、企業買収を断念しなければならないかもしれません。
法務デューデリジェンスを行うには、法的リスクを発見するための勘所や、発見された法的リスクを前提とした戦略立案を行うための専門知識、経験が不可欠であり、弁護士に依頼するのが一般的です。
➁財務デューデリジェンス
財務デューデリジェンスでは、対象会社のこれまでの財務、会計、税務から、現在の財務状況を確認するとともに、将来的な損益の予測を行います。
主な調査事項:
- 売上高
- 費用
- 収益
- 売上債権
- 仕入債務等
財務デューデリジェンスにおいても、リスクを発見する勘所と、解決策を提案する専門知識、経験が必要となるため、会計士や税理士に依頼するのが一般的です。
➂ビジネスデューデリジェンス
ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業のビジネスモデル、事業性及び企業買収による相乗効果の実現可能性等を評価するための調査です。
主な調査事項:
- 対象企業の属する業界の将来性
- 競業他社の動向
- 対象企業の経営方針
- ビジネスモデル
- 投資の内容等
企業買収を行う目的、つまりどのようなシナジーを得たいかについては、買収を行おうとする企業が一番理解しているため、ビジネスデューデリジェンスは、買収を行う企業が自ら行うことも珍しくありません。
ただし、客観的なセカンドオピニオンが欲しい場合、異業種間での企業買収を行う場合などには、経営コンサルタントに依頼することもご検討ください。
➃その他のデューデリジェンス
このほかにも、人事デューデリジェンスやITデューデリジェンスなど様々な種類があります。
また、前述の法務デューデリジェンスのうち、特に知的財産権に関する調査を、知的財産デューデリジェンスということもあります。
◆専門家の活用
デューデリジェンスを行うためには、対象企業から必要な情報の開示を受けることが必要になります。
そして、適切な判断を行うためにどのような情報が必要か、言い換えると、どこにリスクが潜んでいるのかを判断するための勘所は、多くの経験を積むことで身に付けられるものです。
日本の企業の多くは、日常的に企業買収を行っているわけではありません。
デューデリジェンスを行うにあたり、少しでも不安がある場合には、弁護士、会計士、税理士、コンサルタントなどの専門家に相談することが望ましいといえます。
弁護士法人法優法律事務所では、企業買収・M&A・法務デューデリジェンスに関するサポートを行っております。
小林は一部上場企業からベンチャー企業まで、企業法務の経験がありますので、企業法務に関してご相談があります企業様はお気軽に弊所までご連絡ください。
遠方の企業様でもZoomなどを用いて、オンラインで打ち合わせを行うことができますので、可能な限り全国対応いたします。
弁護士法人法優法律事務所
弁護士 小林幸平