◆はじめに

数ある法律事務所の中から、弊事務所のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。

本記事は、企業買収を検討されている皆様に向けて、有益な情報を提供させていただくことを目的としています。

もっとも、ひとくちに企業買収といっても、様々なものがあります。

ニュースで取り上げられるような大企業同士の買収案件もあれば、後継者不足を背景とした中小企業の買収案件もあります。

最近では、スタートアップ企業への出資、買収案件も増えています。

案件の大小やスキームによって、進め方や留意点は異なります。

のため、本記事では、特に、企業買収を検討されている中小企業の皆様を念頭に、企業買収の概要やポイントを解説していきたいと思います。

 

◆企業買収とは

企業買収という言葉は、会社法上の用語ではなく、明確な定義はありません。

狭義の意味では、対象企業を買収すること、つまり子会社にすることを指しますが、実務上は、対象企業の事業、あるいは企業そのものを買収する手段全般を含むと考えて差し支えありません。

なお、M&Aという言葉も、企業買収とほぼ同義で使われています。M&Aは、Mergers & Acquisitionsの略です。

Mergersは合併を、Acquisitionsは買収を指します。

 

※企業買収と似た言葉に「企業結合」があります。

こちらについては、公正取引員会が公表している「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」の中に具体例が列挙されており、株式譲受のほかに、合併や事業譲渡なども含まれます。

 

◆企業買収を行う目的は

企業買収を行う目的はいくつかありますが、その1つとして、事業展開のスピードを高めることが挙げられます。

IT、AIを始めとする技術革新が進み、それにより社会の変化スピードが急速に高まっています。

企業には、これまで以上に社会の変化に迅速かつ柔軟に対応していくことが求められており、その手段の1つが企業買収です。

自社に足りない技術、人材、商流などを持つ企業を買収することで、自社開発する場合よりも急速に事業展開を進めることができます。

ここ数年で、企業買収が着目され、力を入れる企業が増えています。

しかし、気を付けなければならないのは、目的は適切に事業展開をすることであり、企業買収はあくまでそのための手段だということです。

企業買収を行うことは、買収側にも、対象企業にも大きなリスクを伴います。

企業買収を行うメリットとリスクを比較し、企業買収を行うかを適切に判断していく必要があります。

 

◆企業買収の進め方

企業買収の進め方は大きく分けて、3つの方法があります。

➀M&A仲介業者に仲介を依頼する

➁知人から紹介を受ける

➂自社内のデータベースを活用して対象企業を選定する

 

それぞれについて、進め方を見ていきたいと思います。

 

[➀M&A仲介業者に仲介を依頼する場合]

M&A仲介業者に仲介を依頼することで、要望に合った企業の紹介を受けることができます。M&A仲介業者に依頼する場合の大まかな流れは以下の通りです。

 

 

  • M&A仲介業者の選定

業者によって、得意とする業界、領域は異なります。

まず、その業界、領域を得意とするM&A仲介業者を選ぶことが重要です。

また、どこまでの支援を受けられるかも、業者によって様々です。

仲介だけでなく、その後のスキームの検討、デューデリジェンスなどの支援を行ってくれるところもあります。

仲介のみを依頼する場合、必要に応じて、別途、弁護士や税理士にデューデリジェンスなどを行ってもらう必要となります。

M&A仲介料は決して安くはありません。

依頼する前に契約内容をしっかりと確認することが必要です。

契約内容に不安がある場合には、弁護士に相談することが有効です。

 

  • 対象企業の紹介、初期分析・バリエーション

M&A仲介業者から紹介を受けた企業について、初期分析・バリエーションを行うことになります。

必要な情報はM&A仲介業者から提供されるので、その結果をふまえて、自社内で、企業買収を進めるかを検討することになります。

 

  • スキームの検討

企業買収にはいくつかのスキームがあります。

後述の「企業買収の種類」に、大まかな種類を掲載しました。

 

  • 基本合意書の作成

買収検討を進めることについて対象企業と合意が取れた場合、それまでに合意した内容をまとめた基本合意書を作成します。

 

(基本合意書に定める条項)

  • 買収価格やスキーム、スケジュールなど買収条件に関するもの
  • 独占交渉権
  • 秘密保持義務
  • デューデリジェンスへの協力義務

     

    (基本合意書締結の留意点)

    基本合意書は、法的拘束力を持たせないことが一般的です。

    そのため、基本合意書を締結した後でも、買収を行わないと決定することも可能です。

    ただし、そこで定められた条件を覆すことは容易ではありません。

    また、独占交渉権、秘密保持義務などは法的拘束力を持たせるのが一般的です。

    そのため、基本合意書を締結する際には慎重に内容を吟味する必要があります。

    M&A仲介業者が間に入っている場合でも、あくまで中立的な立場であることが多く、貴社の利益を第一に考えて動けないことがあります。

    締結前に弁護士に相談し、不利な条項がないか確認してもらうことをお勧めします。

     

    • デューデリジェンスの実施

    デューデリジェンスには、法務デューデリジェンス財務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンスなど様々な種類があります。

    法務デューデリジェンスのポイントとしては以下のようなものがあります。

     

    (契約上のリスク)

    対象企業の主要な取引先との間の契約関係を確認し、契約上のリスクの有無を調査する必要があります。

    取引基本契約、長期契約、共同開発契約など、確認すべき契約書の種類は多岐にわたります。

    損害賠償条項や販売継続義務など不利益な内容が含まれる場合、買収後に貴社に不利益を及ぼす可能性があります。

    また、企業買収が行われると契約が解除される場合もあります(チェンジオブコントロール条項)。

    どのような契約書のどの条項を確認するべきか判断することは難しいため、M&A仲介業者が間に入っている場合でも、弁護士に相談することをお勧めします。

     

    (訴訟・係争)

    買収を行う前に、訴訟・係争の有無を確認する必要があります。

    現に起きている訴訟・係争を確認することはもちろん、将来発生しうる訴訟・係争の有無も確認する必要があります。

    基本合意書の中で、デューデリジェンスへの協力義務を定めている場合、対象企業は訴訟・係争の有無を報告する義務があります。

    一方で、将来発生しうる訴訟・係争については、範囲が不明確であり、対象企業が隠そうと思えば、隠すことも可能です。

    それを防ぐために、対象企業に対し、適切な情報開示要求を行う必要があり、経験を積んだ弁護士に依頼することが重要です。

     

    (その他)

    • 知的財産権
    • 株主情報
    • 環境汚染の有無
    • 従業員・役員に反社会的勢力者がいないか など

     

    財務デューデリジェンスでは、損益計算書と貸借対照表を分析する必要があります。

    ビジネスデューデリジェンスでは、対象企業のビジネスモデルや業界の動向などを調査します。

     

    [➁知人から紹介を受ける場合]

    知人から紹介を受けた場合も、流れはM&A仲介業者に依頼する場合と大きくは違いません。

    最大の違いは、初期分析・バリエーション、デューデリジェンスに必要な情報収集や交渉を自ら行わなければならないということです。

    M&A仲介業者に依頼する場合以上に、弁護士、税理士といった専門家に相談することが必要です。

     

    [③自社内のデータベースを活用して対象企業を選定する場合]

    自社内に関連する業界のデータベースを備えている場合には、自社のデータベースから対象企業を選定していくことも可能です。

    大きな流れは、知人から紹介を受けた場合と同じです。

    一番の違いは、対象企業に買収の意思があるかわからないことです。

    そのため、対象企業への最初のアプローチが極めて重要となります。

    弁護士を代理人として対象企業に接触することも可能です

     

    ◆企業買収の種類

    法律上のスキームは数多くありますが、実態に着目すると、大きく4つの類型に分けられます。

     

    [➀株式取得(子会社化)]

    議決権の過半数を占める株式を取得することで、その企業を子会社とすることができます。子会社化することで、対象企業の経営を支配することができます。

    [➁合併]

    合併とは、2つの企業が1つの企業となることを指します。

    このうち、吸収合併と呼ばれる方法では、対象企業の法人格が消滅し、そのすべての資産を引き継ぎます。

     

     

    [➂合弁会社設立]

    対象企業と合弁契約を締結し、合弁会社を設立します。

    合弁契約に定めた条件に従い、対象企業と共同で合弁会社を運営し、合弁会社があげた利益を分配します。

     

    [➃事業譲渡]

    対象企業と事業譲渡契約を締結し、特定の事業を買い受けます。

     

    弁護士法人法優法律事務所では、企業買収・M&Aに関するサポートを行っております。
    小林は一部上場企業からベンチャー企業まで、企業法務の経験がありますので、企業法務に関してご相談があります企業様はお気軽に弊所までご連絡ください。
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    弁護士法人法優法律事務所
    弁護士 小林幸平