◆はじめに
2021年4月1日に、経済産業省は、中小小売商業振興法施行規則の一部を改正する省令(以下「本省令」といいます。)を公布しました。
本省令は、2022年(令和4年)4月1日に施行されます。
本省令により、フランチャイズ事業における法定開示書面の見直しが必要となる可能性もあります。
そのため、本記事では、中小小売商業振興法施行規則改正のポイントについて、説明いたします。
◆法定開示書面とは
法定開示書面とは、「フランチャイズ契約の要店と概説」、「契約のあらまし」などとも呼ばれる書面で、フランチャイズ本部が、フランチャイズ加盟希望者に対し、展開しているフランチャイズの内容を説明するための書面のことをいいます。
法定開示書面の作成義務及び説明義務については、中小小売商業振興法第11条で規定されています。
◆中小小売商業振興法施行規則とはなにか
法定開示書面について、「中小小売商業振興法」という法律と、「中小小売商業振興法施行規則」という省令が関わります。
両者の関係についてですが、以下の中小小売商業振興法第11条の規定をみると理解することができます。
【引用】(特定連鎖化事業の運営の適正化)
第十一条 連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。
一 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
二 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
三 経営の指導に関する事項
四 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
五 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項
2 経済産業大臣は、前項の経済産業省令の制定又は改廃をしようとするときは、小売業に属する事業を所管する大臣に協議しなければならない。
上記で、「経済産業省令」という記載がありますが、この「経済産業省令」にあたるのが、中小小売商業振興法施行規則です。
すなわち、中小小売商業振興法で、法定開示書面で記載すべき事項の大枠が規定されており、これに加えて、中小小売商業振興法施行規則で、法定開示書面で記載すべき事項の細かい部分が規定されているということになります。
◆本省令における改正内容
法定開示書面の記載事項については、中小小売商業振興法施行規則第10条及び第11条で規定されていますが、本省令では、以下の部分が改定されています。
[中小小売商業振興法施行規則第11条第7号の追加]
中小小売商業振興法施行規則第10条第7号として、以下の条文が追加されます。
【引用】七 加盟者の店舗のうち、周辺の地域の人口、交通量その他の立地条件(次条において単に「立地条件」という。)が類似するものの直近の三事業年度の収支に関する事項
立地条件の具体的内容としてどのような事項を記載すべきかは、中小小売商業振興法施行規則第11条第7号に、以下の条文が追加されることになります。
【引用】イ 当該特定連鎖化事業を行う者が把握している加盟者の店舗に係る次に掲げる項目に区分して表示した各事業年度における金額(⑹にあっては、項目及び当該項目ごとの金額)
⑴ 売上高
⑵ 売上原価
⑶ 商号使用料、経営指導料その他の特定連鎖化事業を行う者が加盟者から定期的に徴収する金銭
⑷ 人件費
⑸ 販売費及び一般管理費(⑶及び⑷に掲げるものを除く。)
⑹ ⑴から⑸までに掲げるもののほか、収益又は費用の算定の根拠となる事項
ロ 立地条件が類似すると判断した根拠
以上から、本省令が、施行されることとなる2022年4月1日以降、法定開示書面において、中小小売商業振興法施行規則第11条第7号に規定された事項を規定する必要があります。
◆中小小売商業振興法施行規則改正の背景
中小小売商業振興法施行規則改正の背景については、中小企業庁が、令和3年1月29日に公表した「中小小売商業振興法施行規則の一部改正について」で述べられているため、以下、紹介します。
【引用】昨今の最低賃金の引き上げなど人的コストの上昇の中で、小売業や飲食業等の特定連鎖化事業においても、売上げが伸びなければ加盟店の利益は圧迫されていくこととなるが、こうした環境変化を受け、特にコンビニエンスストアについては、経済産業省「新たなコンビニのあり方検討会」報告書において、加盟希望者に対して店舗の経営に関連する様々な情報を開示し説明を尽くすことが本部とオーナーの認識ギャップを解消する有力な手段になるとして、例えば、フランチャイズ契約締結時に、既存の加盟店の経営状況が分かる定量的な情報を本部が適切に開示することの義務付けも検討すべきと提言されたところである。
また、公正取引委員会「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」においても、調査結果を受けて、加盟者募集に際して「人件費が高騰してきている」といったリスク情報や加盟後にオーナーが負担することとなる経費等の情報を示すなど、加盟希望者が適切な判断を行えるよう丁寧な説明を行うことが望まれるとしている。
これらを踏まえ、特定連鎖化事業の持続的な成長の実現に向け、契約締結時の情報開示に係る取組を充実すべく所要の改正を行う。
上記の記載から、中小小売商業振興法施行規則改正の背景に、コンビニエンスストアのフランチャイズ事業におけるフランチャイズ本部とフランチャイズ加盟希望者との問題があったことがわかります。
参考:公正取引委員会「(令和2年9月2日)コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」
◆まとめ
以上、中小小売商業振興法施行規則改正のポイントについて説明をしました。
フランチャイズ事業を行っている事業者の方は、本省令が施行される2022年4月1日までに、法定開示書面の見直しを行うことをオススメいたします。
また、改正部分だけでなく、法定開示書面の作成や見直しにつきまして、弊所で対応いたしますので、お気軽にご連絡をいただければと存じます。
法定開示書面だけでなく、フランチャイズ契約書についても、この機会に見直しをすることをオススメいたします。
弁護士法人法優法律事務所では、フランチャイズ事業に関するサポートを行っております。
小林は一部上場企業からベンチャー企業まで、フランチャイズ事業のサポート経験がありますので、フランチャイズ事業でご相談があります企業様はお気軽に弊所までご連絡ください。
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弁護士 小林幸平