◆はじめに

フランチャイズ展開を行う場合、フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟者希望者との間でフランチャイズ契約を締結する必要があります。そのため、フランチャイズ契約書の作成が必要となります。

それでは、フランチャイズ本部は、フランチャイズ契約書だけを用意すればよいのかというと、実はそれだけでは足りず、法定開示書面を用意しなければいけないケースがあります。

フランチャイズ契約書が必要であることを理解している人は多いと思いますが、法定開示書面も必要であることを理解している人は意外に少ないかもしれません。

そこで、フランチャイズ本部の方やフランチャイズ加盟希望者の方を対象に、法定開示書面とはなにかを説明します。

 

◆法定開示書面とは

フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟希望者は、フランチャイズ契約を締結することになりますが、通常、フランチャイズ契約書の内容は、条文数が多くなります。
また、フランチャイズ加盟希望者の方は、法律の文章に馴染みがない人も多く、フランチャイズ契約書の内容をしっかり理解することが難しいことが現状です。
ただ、フランチャイズ加盟希望者が、内容をしっかり理解せずにフランチャイズ契約書を締結してしまうと、当然トラブルが生じる可能性が高まります。

そこで、フランチャイズ本部は、フランチャイズ加盟希望者に対して、フランチャイズ契約書の内容を十分に理解してもらうために、法定開示書面を交付し、フランチャイズ契約書の内容を説明することが必要となります。

法定開示書面は、中小小売商業振興法という法律が法的な根拠となっています。
中小小売商業振興法第11条で、フランチャイズチェーンやボランタリーチェーンなどを「特定連鎖化事業」とよび、特定連鎖化事業を行う場合には、特定の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならないとされています。

法定開示書面は、情報開示書面と呼ばれることもあり、名称としては、「フランチャイズ契約の要点と概説」、「契約のあらまし」などが付されることもあります。

 

◆法定開示書面はかならず作成する必要があるか

法定開示書面について、一つ注意をしておかなければならないことがあります。
中小小売商業振興法における法定開示書面の交付・説明義務は、小売業と飲食業でフランチャイズ展開をしている本部のみに課されているだけなのです。
したがって、この法律では、サービス業でフランチャイズ展開をしている本部には法定開示書面の交付・説明義務を負わせていません。

しかし、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」という独占禁止法に関するガイドラインにおいて、小売業や飲食業だけでなく、サービス業の本部についても「開示が的確に実施されることが望ましい」とされています。

そのため、中小小売商業振興法で、法定開示書面の交付・説明義務を負わされていないサービス業でフランチャイズ展開をしている本部も、法定開示書面を作成しているケースがみられます。

中小小売商業振興法で法定開示書面作成の義務を負っていない場合でも、法定開示書面を作成し、加盟希望者に丁寧に説明をしておくことにより、後々のトラブルを回避することができます。
また、法定開示書面を作成していると、加盟希望者に信頼ができる本部であるという印象を持ってもらうこともできるため、中小小売商業振興法で法定開示書面の交付・説明義務を負っていない場合でも、法定開示書面を作成する方が、メリットが多いと考えられます。

したがって、中小小売商業振興法で法定開示書面作成の義務を負っていないフランチャイズ本部でも法定開示書面を作成することをオススメします。

 

◆法定開示書面にはどのような内容を記載する必要があるか

次に、具体的にどのようなことが法定開示書面に記載されているかを説明しましょう。
前述のように、法定開示書面については、中小小売商業振興法の第11条で規定されており、これを受けて中小小売商業振興法施行規則第11条が規定されています。
中小小売商業振興法施行規則第11条では、少なくとも、以下の内容を記載しなければならないものとされています。

実際の企業で使用されている法定開示書面について、以下の日本フランチャイズチェーン協会のサイトで公開されていますので、これらを参考にすることもできます。

 

(一般財団法人日本フランチャイズチェーン協会「情報開示書面」)

 

◆まとめ

以上、法定開示書面の概要について説明をしました。
法定開示書面については、分量が多く、法律の知識がない方が作成するのはなかなか難しいと思いますので、作成の際には弁護士に相談をすることがよいと思います。

本部の方が時間を掛けて法定開示書面を作成しているケースがありますが、作成方法をご存知ないために多くの無駄な作業をしている場合もしばしば見受けられます。
そこで、法定開示書面の作成の準備段階で、弁護士に相談をすることで、社内における無駄な作業を防ぐことができると思います。

 

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弁護士 小林幸平